2014/08/02
戸籍は過去に何回かの様式変更がありましたが、その様式変更は、その時代の考え方をよく表しています。
宗教までを管理していた江戸時代、「大家族」を国家の基本的な柱と考えていた時代、それぞれの時代の背景とともに、戸籍の歴史の変遷についてご覧ください。
目次
「宗門人別改帳」とは江戸時代の中期に幕府によって村ごとに作製され、領主に提出された基礎台帳のことです。
以前のキリスト教徒の弾圧のために実施されていた「宗門改帳」と、領主による「人別改帳」が統一され、制度化されたものです。
この「宗門人別改帳」は、通常の戸籍謄本類のように「官公庁への書類提出」という手続きによってでは取得できず、図書館などを訪ね、1つ1つ集めていくしか方法はありません。
明治政府により初めて作られた、現在の戸籍制度の出発点となる戸籍の形式です。
戸籍が編成された年の干支が「壬申」だったために、「壬申戸籍(じんしんこせき)」とも呼ばれます。
この戸籍には、家族関係の記述以外にも、犯罪歴や病歴、平民や士族といった身分も記されていたようです。
このため、人権保護上の観点から、昭和43年以降は閲覧ができなくなってしまいました。
法務省によれば、「この戸籍は廃棄処分とした」ということになっています。
「ということになっている」というのは、「実際には現存している」という噂もあるということですが、いずれにしても、簡単に入手できるものでないことは確かです。
使用時期:明治19年~明治31年
この「明治19年式戸籍」以降は、通常の「官公庁への書類提出」により、取得することができます。
書類上には「本籍地」という記載はないものの、以後の戸籍で「本籍地」にあたる部分に「地番」が書き込まれるようになりました。(地番とは、土地の1つ1つに振られた番号のことです。)
戸主を中心とした「家単位」で編成され、出生、死亡、結婚、離婚、養子縁組などについての記述がなされました。
また、戸籍から抜けた人間をその戸籍上から消す「除籍制度」も採り入れられました。
*実際には「消す」といっても、人物名を二本線で消したり、×印をつけたりして「消して」いました。
使用時期:明治31年~大正3年
明治31年に制定された民法(旧民法)で「家制度」が制定されたために、人の身分関係についてもより詳細な記述が行われるようになりました。
それは例えば、戸主については、「前戸主との続柄」や「戸主となった原因・日付」などであり、また戸主以外の人間については、「家族との続柄」や「父母の名前」などがより詳細に記述されるようになりました。
使用時期:大正4年~昭和22年
書式から「戸主となった原因・日付」(戸主ト為リタル原因及年月日)の欄が廃止され、「戸主の事項欄(=戸主に起こった全てのことを記入する欄)」に記入されることになりました。
また、明治31年以降、戸籍とは別に「身分登記簿」というものが存在していましたが、これも同時に廃止され、人の身分については戸籍に一本化されることとなりました。
使用時期:昭和32年頃~現在
戦後の法改正により家制度が廃止され、夫婦を基本単位とする現在の戸籍制度になりました。
「戸主」という呼び名も「筆頭者」に改められ、同時に「家督相続=戸主の座を相続する」という制度もなくなりました。
法改正そのものは昭和23年に行われましたが、戦後の混乱等により、実際に戸籍簿が「昭和23年式」に書き換えられたのは、昭和32年~昭和40年ごろとなりました。
また、それまでの戸籍は「戸主」が亡くなる都度新しく戸籍を作り直していましたが、この昭和23年式戸籍以降は、「筆頭者」が亡くなっても新しい戸籍を作り直すことはしなくなりました。
尚、当サイトの中で「戦後の戸籍」と呼んでいるものは、この昭和23年式戸籍以降の戸籍のことを指し、また、「戦前の戸籍」と呼んでいるものは、明治19年式戸籍~大正4年式戸籍のことを指します。
使用時期:平成6年~現在
平成6年に戸籍法の改正があり、戸籍事務がコンピュータ処理できるようになりました。
これにより、書式もそれまでの縦書きから横書きへと変更になりました。
しかし、自治体によってはまだ戸籍事務のコンピューター管理が完了していないケースもあり、この場合には、「昭和23年式戸籍」が現役で使われています。
現在の法律では、「ある戸籍から、死亡、婚姻などで人が抜け、その戸籍に誰もいなくなった状態(この状態の謄本を除籍謄本といいます)」になった翌年から150年経過すると、その謄本は破棄してもよい、ということになっています。
「除籍謄本」とは?(別ウィンドウで開きます)
現在取得できる最古の戸籍謄本(明治19年式戸籍)の廃棄が可能になるまで、あと20年ほどはありますが、いずれは破棄され、過去のデータをさかのぼることが難しくなっていくであろうことは確かです。
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